このページでは、軟膏の効果と副作用、デメリット、ピアッシングに使えるか、肉芽や腫れに効くか…について、目的(種類)ごとに解説していきます。
参考 ピアストラブルと対応について
参考 ピアスのアフターケア
化膿(膿んだ)ケアをしたい
抗生物質軟膏
雑菌が育つのを阻害する薬品です。
バイキンをやっつける点では消毒と同じですが、違うのは「バイキンの細胞だけを狙うこと」です。
そのため、狙うバイキンの種類によって種類が多々あります。
よく「予防」で使われますが、実は危険なお薬です。
ドルマイシン
ピアスではなぜかドルマイシンが良く使われますね。
作用する細菌の異なる、2種類の抗生物質が入っています。
成分
参考 ドルマイシン軟膏 使用上の注意
コリスチン硫酸塩(環状ペプチド系抗生物質)
バシトラシン(ポリペプチド系抗菌薬)
テラマイシン
テラマイシンも市販薬として有名です。
ドルマイシンとは種類が違うのですが、作用する細菌の異なる、2種類の抗生物質が入っている点では同じような薬剤です。
成分
参考 テラマイシン軟膏a 添付文章
ポリミキシンB硫酸塩(ポリペプチド系抗生物質)
オキシテトラサイクリン塩酸塩(テトラサイクリン系抗生物質)
ゲンタシン(ゲンタマイシン)
ゲンタシンは医師の処方でもらえるお薬です。
あとで説明するAMRは医師でも無関心な方がおられ、医師によっては長期乱用してしまう人もいますので、信頼できる先生と一緒に使いましょう。
成分
ゲンタマイシン硫酸塩(アミノグリコシド系抗生物質)参考 ゲンタシン軟膏 0.1 – くすりのしおり ゲンタシン軟膏
参考 ゲンタマイシン硫酸塩軟膏0.1%「タイヨー」 – くすりのしおり
全て広範囲の細菌に効果を示します。
「薬剤耐性菌」の問題
とても便利なお薬である反面、近ごろ抗生物質による薬剤耐性菌の発生が問題になっています。
耐性菌化してしまうと、薬が効かなくなってしまいますΣ(゚д゚lll)
ぬったり塗らなかったり、ダラダラ続けたり・・・がイチバンダメです。
医者から昔貰ったやつ使おう♪もダメ!特に飲み薬!。
肉芽に効くの?
感染性の肉芽にのみ効果を発揮する「こともあります」
別ページに詳しく記述しています↓肉芽の種類を見極めなければ、悪化の元になります。
ピアッシングに必要ではない
ピアスを開けるときは消毒をしますし、あけたてのピアスホールにはバイキンはほとんど住んでいません。
先程からお伝えしているAMRのリスクばかり増えてしまうため、ニードルでのピアッシングやファーストピアスでの抗生物質の使用は不必要です。
どんな時に、どうやって塗るの?
基本的なケアをしていても、感染の力が強くて治りきらないときに使います。
お薬の説明書に従って1日1~2回程度、必ず塗り忘れないように毎日続け
指定の期間が来たら終了します。
それでも治らない場合はお薬が合っていないか、別の原因が考えられるため、ダラダラ塗り続けることはせずに皮膚科へ向かいましょう。
腫れや肉芽増殖を抑えたい
ステロイド軟膏
傷の治り方で説明をした「腫れ(炎症)を起こす命令を出す物質」の力を弱める薬です。
腫れを起こす力が弱くなるので、みるみる炎症は落ち着いてきます。
しかし、「炎症の原因」が残っている場合、お薬をやめたら再発します。
「腫れ」でお困りのときは、まずこちらのページを参考にしてくださいね
感染に弱くなってしまう
腫れ(炎症)は抑えられるのですが、反対にバイキンと戦う力も弱くなってしまうという最大の欠点が・・・。(そのため、市販のお薬には抗生物質がセットになっているものばかりです。)
細胞の増殖をおさえる
細胞を作る命令も阻害するため、それを利用して肉芽やケロイドなど、余分な細胞たちを小さくする治療に使われることがあります。
一方、細胞ができにくくなるということは、使えば使うほど、皮膚が弱くなっていくのです。
弱い皮膚は、もちろん刺激や感染に弱くなります。
そのため、慎重に使用する必要があるのです。
リンデロンV(G)軟膏
よく病院でもらう代表的なステロイドですが、5段階あるランクのうちの3群:strong[強力]にあてはまる、まずまず強いお薬です。
リンデロンは気軽に処方される先生が多いですが、間違った使用法では症状が突然悪化する原因になります。
リンデロンVは抗生物質なし、VGはゲンタマイシン(抗生物質)入りです。
成分
ベタメタゾン吉草酸エステル(ステロイド剤)
(VGはゲンタマイシン硫酸塩(アミノグリコシド系抗生物質)入り)
ドルマイコーチ軟膏
ドルマイコーチ軟膏はゼリア新薬工業が発売するお薬です。ステロイドに、ベトネベートやフルコートと同じ抗生物質、そしてもう1種類、計2種類の抗生物質が混ざった軟膏です。
強さは一番マイルドな5群:weak[弱い]ですが、もちろん弱くともステロイドとしての機能は十分です。
成分
参考 ドルマイコーチ軟膏 使用上の注意
フラジオマイシン硫酸塩(アミノグリコシド系抗生物質)
バシトラシン(ポリペプチド系抗菌薬)
ヒドロコルチゾン酢酸エステル(ステロイド剤)
テラ・コートリル軟膏a
テラ・コートリル軟膏aはジョンソン&ジョンソンが発売する、ステロイドに1種類の抗生物質が混ざった軟膏です。
ランクは一番弱い、5群:weak[弱い]ですが、もちろん弱くともステロイドとしての機能は十分です。
こちらだけ、他の3つのお薬と異なる抗生物質が使用されています。
成分
参考 テラコートリル軟膏 添付文書
オキシテトラサイクリン塩酸塩(テトラサイクリン系抗生物質)
ヒドロコルチゾン酢酸エステル(ステロイド剤)
ベトネベートN軟膏AS
ベトネベートN軟膏ASは第一三共ヘルスケアが発売する、ステロイドに抗生物質が混ざった軟膏です。
※緑のパッケージのベトネベートは、抗生物質が入っていないものになります。
こちらはリンデロンと同じ3群:strong[強力]にあてはまります。
成分
参考 ベトネベート軟膏 添付文書
フラジオマイシン硫酸塩(アミノグリコシド系抗生物質)
ベタメタゾン吉草酸エステル(ステロイド剤)
フルコートf
フルコートfは田辺三菱製薬が発売する、ステロイドに抗生物質が混ざった、3群:strong[強力]にランク付けされる軟膏です。
ベトネベートN軟膏ASと同じ抗生物質が入っていますが、ステロイドの種類が異なります。
成分
参考 フルコートf 添付文書
フラジオマイシン硫酸塩(アミノグリコシド系抗生物質)
フルオシノロンアセトニド(ステロイド剤)
ピアッシングには絶対NG!
見た目は「炎症」が起きないので、塗っているととても調子が良いように勘違いします。
そのため、時々ピアッシング時にニードルに塗るように説明されているサイトがあり、習って使っている人も多いです。
しかし、先程説明したように「皮膚ができるのを阻害する」薬です。
これから皮膚を作っていくぞ!という、ピアッシングに使うお薬では、絶対にありません!(>_<)
ピアッシング時の止血と潤滑目的であれば、ワセリンがいちばんです。
どんな時に、どうやって塗るの?
一時的な理由のとてもツライ腫れや痒み(金属アレルギーなど)を抑えたいときに使います。
また、細胞の増殖をおさえるので過剰な肉芽に対しても使われます。
どうしても原因が分からない炎症が治らない時に使うこともありますが、感染が起きやすくなるため細心の注意が必要です。
塗り方はお薬・症状により異なり、1日1~数回を患部に塗布して症状が収まるまで塗り、症状が収まってきたら徐々に回数を減らしたり、薬の強さを弱くしていって塗るのをやめる方法が一般的です。
使う時は、薬の説明をしっかり読み、適正利用の範囲内で。
できることなら、お医者さんと相談しながら使用してくださいね。
ニードルなどで潤滑を良くしたい
ワセリン(プロペト)
単に、ニードルの止血目的や、ピアスの付け替えで滑らせるために使用するならワセリンがイチバンです。
ニードルでのピアッシングに最適
ニードルのピアッシングで抗生物質が要らない事はコチラでお伝えしている通りです。
ワセリンはほとんどすべての軟膏の「基剤」となる成分で、逆に言えば副作用やAMRなど余計なことを考えずに使用できる唯一の軟膏。
油の塊のようなものなので、ニードルの穴をふせぎ、出血に膜を張るのには十分な機能です。
逆に言えば、油ですので、汚れや水分を閉じ込めてしまう性質があるため、漠然と塗り続けずに、必要最低限の使用に留めましょう。
効果は保湿のみ
効果は保湿(といっても、水分を通しにくいということ)だけです。
ちなみに黄色ワセリン(ヴァセリンはこちら)は純度が低く、硬い印象がありますが、安いです。
白色ワセリン(プロペトもこちら)は純度が高く、柔らかいですが、高いです。
硬いのも柔らかいのも一長一短なので、その時の使い勝手に応じたタイプを購入されると良いと思います(*^-^*)
消毒や、ピアスを滑りやすくしたい
消毒軟膏
オロナイン
クロルヘキシジングルコン酸塩液という消毒液が主成分です。
アルコールより少し優しいけど、効果的な消毒成分です。
オロナインは化膿の予防として使われることが多いですが、実は消毒液や抗生物質の代わりにはなりません。
元々きりきず,すりきず,つききずといった浅い傷を視野につくられていて、お薬の説明にも「深い傷は医師等に相談する」ように記載があります。
実際、ピアスで活躍するのは、ほとんど潤滑目的(付け替えなどで滑りやすくするため)です。
私は、ピアスの抜き差しの時や、拡張のときによく使用しています。
(ワセリン替わりですけどね♪安いし匂いが好きなので、笑)
また、ラウロマクロゴール、硫酸アルミニウムカリウムという2種類の止血作用のある成分が入っています。
そして、ワセリンやオリーブオイルなどの「基剤」となる成分たちが含まれています。
時々、「オロナインは油が入っているから、ピアスには良くない」という記述を見ますが、先頭でお伝えしたようにほとんどのお薬の基剤はワセリンですので、どれも油ですので、気にしなくていいと思います(^^;
肉芽に効くの?
肉芽には効きません。
ニードルに塗っても良い?
よく、オロナインをニードルに使ってもいい?とピアッシング時の質問で聞かれます。
成分としては、充分だと思います。
ただし、添加物が多いためなのか、はたまた手技が悪かったのか・・・オロナインでは出血を止めにくかったという話も効きます。
生粋のワセリン主剤のほうが無難かもしれません。